CUERO社製BKFチェアの歴史とバリエーションについて

インテリアコーディネーターのコヤナギです。今回の記事では、名作椅子「BKFチェア」の歴史とバリエーションについて書いていきたいと思います。

BKFチェアはイームズよりも古い椅子

BKFチェアはアルゼンチンのブエノスアイレスにて1938年に誕生。なんと80年以上の歴史があるチェアなんです。イームズチェアが誕生したのが1950年ですからイームズよりさらに歴史は古く、近代インテリアの中でもかなり古い家具ですね。発売当時のBKFチェアは本革ではなくキャンバス地の仕様でした。

【当時の広告】キャンバス地なので、当時は屋外仕様がメインでした

当時の広告。当時は屋外仕様がメインだったようですね

ちなみに、BKFチェアには元になったデザインがあります。それは1855年にイギリスでデザインされた木製フレームの折り畳み椅子「トリポリーナ」。前身のモデルから考えると、150年以上前からこの形は存在していることになりますね。BKFチェアが折りたたみイスっぽい、と思われた方はまさにその通りですね。

※トリポリーナというパスタがありますが、たぶん何の関係もないと思われます。

BKFチェアの名前の由来

BKFチェアという名前は、デザインをしたアルゼンチンデザイナーの3人の頭文字から命名されました。

…アントニオ・ボネット
…フアン・クルチャン
…ホルヘ・フェラーリ=ハードイ

この3人は20世紀を代表する建築家「ル・コルビュジエ」の弟子たち。モダニズムを提唱するコルビュジエとは対照的で、カジュアルな雰囲気ですよね。アルゼンチン人ならではの感性やライフスタイルがデザインとして生きているのかもしれません。また、BKFチェアは別名“バタフライチェア”とも呼ばれています。これは蝶が羽を広げているように見える座面の形状に由来しています。

左:キャンバス ブラック / 右:マリポサ ブラウン

ミッドセンチュリー時代に500万脚販売された

BKFチェアは1950年代から60年代のミッドセンチュリー時代にかけ、特に若者などの新しい家具を求める人々に支持されました。当時はイームズにも引けを取らないほど、爆発的な人気だったとのこと。当時製造を手掛けていたアメリカのノール社は1950年代に500万脚のBKFチェアを販売したといわれています。

ファッションブランドCUERO(クエロ)が復刻

その後、一度販売を終了しましたが2005年にスウェーデンのCUERO(クエロ)社の創業者、ラース・キヤスタディウスがBKFチェアの再生産をスタートしました。CUERO社はもともと家具のメーカーではなく、レザーやキャンバスを扱っていたファッションブランド。CUERO社による復刻されたBKFチェアでは、レザーの張地で復刻。(現在はキャンバス地のものも復刻しました)

生まれ変わった BKFチェアに使用されているのは、通常の手法よりも手間のかかる方法でなめされたベジタブルタンニンのレザー。その仕上げにかかる工程には、熟練の職人による特殊な技術が必要とされる、制作難易度の高いレザーです。このレザーはイタリアのいくつかの小さな皮革なめし工房が連携して仕上げています。素材の革の特性や素材を理解しているCUERO社だからこそ、革の特性や素材感が最大限に生かされるようなデザインができるのだと思います。

変わらないフォルム

バリエーション

現在、BKFチェアは下記のようなバリエーションがあります。

・マリポサレザー(4色):通常レザー
・パンパマリポサレザー(2色):極厚レザー
・キャンバス(3色):帆布
・アイスランドマリポサ(1色):フカフカタイプ

・サンブレラファブリック(2色):アウトドアにも使用可能なタイプ

●マリポサレザー

マリポサシリーズは、ベジタブルタンニンなめしという工程を経て作られた革です。「なめし」とは、動物の皮を製品の革へと変える工程のことですが、このマリポサでは、手間のかかる「ベジタブルタンニンなめし」を採用しています。色の変化が激しいのが特徴です。

マリポサのバリエーションは4色。ナチュラル・ブラウン・ブラック・グリーンです。

BKFチェア マリポサ(ナチュラル)

【レザーのカラー】手前から ブラウン・ブラック・グリーン ※写真はパンパマリポサ仕様の2重ステッチ

BKFチェア ブラウン アップ画像

●パンパマリポサレザー

パンパ マリポサ ポロは、マリポサの革の厚みをより厚く仕上げたモデルです。通常のマリポサが2~2.5mm程度なのに対し、パンパその厚さは4mm。極厚の革なので、ステッチが2重ステッチとなります。通常のマリポサと比べると、よりワイルドな雰囲気になります。

パンパマリポサのバリエーションは2色。ブラウンとブラックです。

パンパ マリポサ ポロ(ブラウン)

2重ステッチの極厚革(4mm)を使用しています

●キャンバス(ナチュラル,ホワイト,ブラック,チャコール)

キャンバスはもともとBKFチェアが作られたときにあった仕様です。いわば、原点回帰のBKFチェアとも言うべき一品ですね。本革のような重厚感はありませんが、逆にカジュアルな演出ができるためナチュラルインテリアやカントリー風インテリアなどには合わせやすいと言えます。

キャンバスの種類は4色。ナチュラル・ホワイト・ブラック・チャコールです。

BKFチェア キャンバス

キャンバスの裏部分にも一部革が使用されています

●アイスランド マリポサ(アイスランドシープスキン:ホワイト)

アイスランドマリポサは、シープスキン(羊の革)を全面に張った仕様。ウール同様吸放出性に優れていますので、見た目ほど暑くはありません。しかし、湿気の多い日本の夏はやはり湿気りやすいので、どちらかと言うと秋冬向けかもしれません。

アイスランドマリポサの色数は1色だけとなり、ホワイトのみの販売です。

アイスランドマリポサ

●サンブレラファブリック(ホワイト, チャコール)

サンブレラファブリックとは、フランスの老舗テキスタイルメーカーであるサンブレラ社製のファブリックを採用した、アウトドア対応モデルです。柔らかくて軽い、でも丈夫といったアウトドアに適したモデルです。このモデルのみ、座面の最下部(座るときにお尻が来る部分)に小さな穴が開いています。これは屋外で使用した際に、雨を排水をするための穴です。サンブレラファブリックには、通常のブラックフレームではなく、屋外用の錆防止フレーム(ガルバナイズドフレーム)がお選びいただけます。

BKFチェア サンブレラファブリック

店頭展示品

店頭では、キャンバス(ブラック)とマリポサ(ブラウン)を展示中です。革とキャンバス、座り心地も異なりますのでぜひお試しください。

https://nonversus.jp/shopvulog2020/06/01_6548
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コヤナギ

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